相続を機に不動産(一戸建)売却。実際の事例を紹介します。|仙台市、利府町の不動産売却

今回は実際にあった事例を紹介します。
相続登記に時間を要して、売却開始までに結構時間がかかりました。
結果として、売却には至ったものの、相続登記だけではなく色んな課題をクリアしました。
ご興味がありましたら是非最後まで目を通してみてください。

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「遺された家と、再生の物語」

――相続物件の売却にまつわるある家族の記録

中村健一(仮名・45歳)が母の訃報を受けたのは、仕事で深夜まで残業していた冬のある日だった。仙台でIT企業に勤め、忙しい日々を送っていた彼にとって、母の死は決して突然ではなかったが、やはり重く響いた。

石巻の実家に一人で住んでいた母は、何年も前から足腰が弱り、最近では近所の介護ヘルパーの助けを借りて暮らしていた。健一は月に一度ほど帰省して手伝いをしていたが、物理的にも精神的にも「遠い存在」になっていた。
姉の尚子(仮名・47歳)とはさらに距離があった。昔は仲の良い姉弟だったが、尚子が結婚してからは価値観の違いが徐々に広がり、連絡はほとんど取らなくなっていた。

母の葬儀を終えたあと、健一と尚子は久しぶりに向かい合った。

「この家、どうするの?」

尚子の問いに、健一は迷いなく答えた。

「もう誰も住まないし、売るしかないと思う」

しかし、尚子は首を振った。

「私はこの家を手放したくない。お母さんが大事にしてた家よ。売ってしまうなんて、寂しい」

この時点で、健一は「売却」はすんなりとはいかないと悟った。

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実家は築35年。駅からは遠く、周囲には空き家も増えていた。建物は老朽化が進み、庭には雑草が生い茂っていた。健一が地元の不動産業者に査定を依頼すると、言われた金額は予想以上に低かった。

「建物には価値がつきません。解体して更地にすれば少しは…でも、費用もかかります」

しかも、名義はまだ母のままだった。さらに土地の一部が祖父名義のままになっており、相続登記の手続きが必要だった。
調べると、祖父の相続に関わる親族が他にも存在し、登記の手続きには全員の協力が必要だという。中には連絡先さえ分からない遠縁の親族もいた。

「こんな面倒なことになるなんて…」

健一は途方に暮れた。

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そんなとき、地元の司法書士を紹介され、相談に行った。司法書士は相続登記のプロセスを丁寧に説明し、「今は空き家問題が全国的に問題になっている。動かずに放置すれば、余計に損をするだけ」とアドバイスした。

同時に、相続に強い不動産会社にも相談。担当者は親身になってくれ、「今は古家でも『DIY物件』として需要がある場合もありますよ」と提案してくれた。

健一は少しずつ動き始めた。

司法書士の協力のもと、他の相続人と連絡を取り、譲渡承諾を得て登記を整理。

実家の中を整理し、価値ある家財を査定業者に引き取ってもらい、仏壇は近くの寺に引っ越し供養。

不動産会社がプロのカメラマンを入れ、家の「味わい」や「立地の静けさ」をアピールできる写真を撮影。

そして最大のハードルは、尚子との再度の話し合いだった。

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健一は思い切って姉に正直な気持ちを伝えた。

「母さんの家を大事に思う気持ちはわかる。でも、このまま残しても、老朽化していくだけだ。誰かが住んで手入れをしてくれる方が、母さんも喜ぶんじゃないか」

尚子は涙ぐみながらうなずいた。

「ごめん、私もわかってた。でも、母がいなくなって、家までなくなったら、本当に何も残らない気がして…」

最終的に、姉弟は売却に同意。

二人で改めて家の掃除をし、最後に仏間で手を合わせた。

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物件は、東京から移住を希望していた30代の夫婦に売れた。彼らは古民家をリノベーションし、ギャラリーとカフェを開くという夢を持っていた。

契約の日、夫婦は「この家に一目惚れしました」と話してくれた。

売却益はきちんと分配され、健一は仙台市内の自宅の住宅ローンを一部返済し、尚子は子どもの学費に充てた。

それ以上に大きかったのは、姉弟の関係が少しずつ修復されたことだった。

「お母さん、たぶん喜んでるよな」

久しぶりにそう言って笑い合った二人の顔には、家族の時間が流れていた。

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終わりに

最後までお読みくださりありがとうございます。
相続物件の売却は、単なる「不動産の処分」ではなく、家族の感情や過去、そして未来と向き合う時間でもあります。
手間も時間もかかりますが、適切なサポートと、少しの誠実さがあれば、たとえ複雑なケースでも前に進むことができる。
そんなことを教えてくれる実際の事例です。